君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】
「藤さんが僕の存在を消すまでに僕は変わりたいと思っているんだ。
だから、それに付き合ってくれないかな」
「え」
「僕がもっと明るくて、人気だったら……もしかしたら藤さんは僕を好きになってくれるかもしれない」
「…………」
眉を八の字に下げた彼は、そう言うと視線を伏せる。
何も言えずに私はただ彼を見つめていた。
今の槙野くんが変わってしまったら。
私はもう今の槙野くんを知るチャンスはなくなってしまうの?
ふっと、そんな考えが頭を過る。
どっちにしろ、彼と私はほとんど関わり合いがなかったんだ。
存在を消された後の明るい槙野くんと仲良くなったとしても、問題ない。
それが“槙野くん”だって思うようになる。
でも、それって違う。
どこかおかしいよ。