君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】

槙野くんは槙野くんを偽ってしまうんじゃないの?
私に好かれる人間に変わるってそんな容易なことじゃないと思うんだ。


「槙野くんはそれでいいの?」


私がそう口にすると、槙野くんは目をぱちくりとさせる。
言っている意味がわからないらしい。


「なんで今の槙野くんを私が好きにならないって思ってるの?」

「わかる。だって、僕は藤さんに惚れられる要素を持っていない」

「それは私もだよ」

「違う!藤さんは魅力的だ!」


ハッキリと否定した槙野くんの顔には少しだけ怒りの色が見える。
それから続けざまに言葉を吐き出す。


「藤さんは凄いんだ。リレーの選手だった時に、前の走者が転んでビリになったのを覚えてる?」

「去年の運動会の事?うん、覚えているよ」


そう答えてから、私は顔を曇らせる。

……忘れたくても、忘れられない。
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