君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】
手で隠されていたから、全部は見えないけど目だけこちらに向けた槙野くんは。
「今日、ずっと藤さんの様子がおかしかったのって……それが原因?」
「っ、そ、それは」
「僕が原因なの?」
「………………うん」
何度も視線を彷徨わせた後、私は観念したように答えた。
すると、槙野くんははあ~~~っと大きな溜め息を吐いた。
それから、急に後ろにバタリと倒れ込む。
相変わらず顔を手で覆っているから、表情はわからない。
「えっ!?槙野くん!?」
「……よかった」
ぽつりと放たれた槙野くんの声。
「藤さんに嫌われた、言わなきゃよかったんだ、どうしようってずっと思ってたから」
力なく言った槙野くん。
ゆっくりと手をどかすと、眉を八の字に下げてこっちを見た。
心なしか、耳が赤い気がする。