君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】


「好意があるって思ってていいの?」

「うん」

「僕、自惚れてていいの?」

「うん」

「……夢じゃないよね」

「ははっ」


それには思わず笑ってしまった。



「ほっぺたつねってみる?」

「つねっていいよ」

「遠慮しないよ?」

「うん」


ぎゅっと槙野くんのほっぺたをつねると、「痛い」と彼が言ってまた笑った。


「里緒はね、私の気持ちも槙野くんの気持ちもわかったから帰ったんだって」

「えっ、そうなの?」


槙野くんはひょいっと体を起こして、私に向き合った。


「凄いよね?」

「うん。凄いや。僕は嫌われてるとしか思えなかったし」

「それは槙野くんがマイナス思考だからだって」

「そりゃ思うよ、今日一日ずっとこっち見ないし、僕を避けるようにトイレ行ったり、長田さんと話したりしてるし」

「……気付いてたの?」

「うん。僕、藤さんの事好きだから」

「私の事好きなのに何でわかんないかなあ」

「わかるわけないよ。僕が好きなだけで、藤さんは僕を好きだなんて一言も言ってないんだから」


< 92 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop