にゃおん、とお出迎え

「みゃーおん」
三毛猫さんは月にいるの。
あたしね、よくお話してるんだよ?

「にゃ?」
……月?

「みゃーおん」
ママ、あたしの黒い毛が大好きって言ってた。
大好きなパパと同じ色なんだって。

「にゃご」
君は……

目を見張ったスカイさんから、あたしは目を逸らした。
パパってすがりつけるほど、あたしも楽に生きてきたわけじゃなかったから。

「みゃーおん」
あたしとなら、約束すればまた会えるよ。

「にゃーご」
約束……

「みゃーおん」
そう。だからスカイさんはずっと元気でいて。
食べ物もちゃんと食べて、時々ここで会おうよ。
どうしても寂しくなったらね、こう鳴いたらいいんだよ。

あたしは空を仰いでいつもの言葉をつぶやいた。

「にゃーおん」
大好きよう

ママがあたしに教えてくれた。甘くて優しい愛の言葉。

「にゃおん、にゃおん」
大好きな人に会えなくなった時はね、お空に向かってこういうんだよ。
そうしたらきっと届くから。

「にゃーご、にゃ?」
大好きだよ……ですか?

「みゃ」
そう。

「にゃ」
……ご主人や彼女に、届くのでしょうか。

「みゃーおん」
そうね。三毛猫さんに届けたいときはお月様に向かって鳴けばいいのよ?

スカイさんは俯いたり前足を何度も地面に押し付けたりしながら、興奮する気持ちを押さえつけようとしているみたいだった。
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