にゃおん、とお出迎え


「みゃあ」
そろそろ帰るね、モカちゃん。

「みゃーおん」
うん。あたしはもう少しいるね。

キジちゃんはおじいさんたちを心配させないように、暗くなる前に必ず帰る。
確かにそろそろ夕暮れだけど、ミネちゃんの帰りは夜だから、あたしは帰ってもひとりだしなぁ。

もう少し休憩してようかなぁって丸くなったら、突然近くでビタンって音がした。
軽く地響きもしたかも。
びっくりして目があいちゃった。

見ると、先の方に転んでいる女の子がいる。

あーあ、泣いちゃうかな。

でもその子は、ガバっと起き上がると、口をギュッと閉じて起き上がった。
土で汚れちゃったお洋服を手で払っている。

可愛いスカート、汚れちゃったね。

「……とれない」

女の子はスカートの汚れが気になるみたいで、黒くなったところを何度も何度もこする。
でも逆に汚れが広がってるみたいよ? そこだけ黒模様になっちゃった。

「とれない。とれない。……うっ」

転んでも泣かなかったのに、急にその子の目には涙がいっぱいになっちゃった。

「どうしよ、どうしよう」

足を交互にダンダンってやって、腕で口元を覆う。

悔しいのね? 悲しいのね?

分かるんだけど、あたしじゃ汚れは取れないなぁ。
< 115 / 154 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop