にゃおん、とお出迎え
あたしは、ミネちゃんの腕から飛び出すと、いつも鍵は開けっ放しになっている窓を根性で開けた。
小さな隙間から頭をねじ込ませて外にでる。
後はカンタン。
抜け出すのなんてもう慣れっこだもの。
屋根伝いに歩きながらカタセくんを探すと、案外近くで立ち止まっていた。
何度も何度もミネちゃんのアパートを振り向きながら、一歩進んで立ち止まって二歩戻って立ち止まって。
あら?
また一歩進んじゃった。
何やってるのよ。結局最初にもどってるんじゃん。
「みゃーおん!」
あたしは、屋根から塀に、塀から地面にとぴょーんと飛び降りた。
「うわ。モカ。お前、……実はスゲー運動能力があんだな」
「きしゃー!」
威嚇するつもりで叫んで、カタセくんが怯んだところで大きな袋にアタックする。
地面に落ちたクルクルやまあるい玉の中から、咥えて走れそうな小さな玉を選んで噛み付く。
「おい、モカ」
なによ。もう喋れないんだから、返事なんかしないわよ。
おとなしくついてらっしゃいよ。
一度だけ、そんな気持ちを込めてカタセくんを見つめた後は、アパートまで一気に走る。
ついてくるか来ないかは、自分で決めたらいいわ。
あたし、カタセくんは嫌いなんだから。
別に来なくっても困らないもん。
ここで来なかったら、二度とうちに出入りさせてやらないんだから。
でも、カタセくんはきた。
最初の一歩はゆっくりだったけど、二歩三歩と続く内に、走る速度になって。
まあでも、あたしのほうが足は速いけどね?