にゃおん、とお出迎え

「クリスマスの後からおかしいんだよね。……もしかして、もしかしてだけど、私また振られるのかなぁ」

あたしと出会った頃、ミネちゃんは一緒に暮らしていた男の人に振られたばっかりだったらしい。

それを気にしてるの?
でもね、お別れってどこにでもあるよ。

猫は誰かを好きになっても、一緒に飼ってもらえるなんてことはないし。

だから、思い切り好きって言うんだと思う。
ママも、そうだったんじゃないかな。
大好きって言って、そうしてあたし達をお腹に宿して。
あたしたちとも離れ離れになっちゃったけど、一緒にいる間はいっぱいいっぱい愛してくれた。
だからあたしも、いつまでもママが大好きだって思うの。

ミネちゃんもそうしたらいいよ。

大好きだって言うの。
そうしたらその時の気持ちはちゃんと残る。

離れ離れになっても、ちゃんとあるんだよ?

ミネちゃんが鼻をすすったのをきっかけに、あたしはミネちゃんの腕からすり抜けて、テーブルの上のスマホの前に立つ。

「みゃーおん」
電話、しなよ。ミネちゃん。

「モカちゃん」

「みゃーみゃー」
泣くより聞いたほうが早いよ。

「……電話しろって、言ってるのね?」

涙目になっていたミネちゃんは、あたしの頭を撫でた。

大丈夫よ、ミネちゃん。
気持ちって、自分のものなの。

どう思われるかを気にするより、どう思っているかを大切にしなきゃ。
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