にゃおん、とお出迎え
そんなわけで、ミネちゃんとあたし、カタセくんの青い車に乗り込んで、二時間くらい車に揺られながら懐かしのおうちにたどり着いたのだ。
「美音、おかえり。……あらあらあら、いらっしゃい」
「みゃーおん!」
おかあさんだ! 久しぶり。モカだよ、覚えてた?
「お母さん、この人が電話で話した、片瀬祥吾さん」
「初めまして、片瀬です」
カタセくんが照れながら頭を下げ、おかーさんが「あらぁ、いい男じゃない」なんてお世辞を言ってる。
おかあさんたら、あたしも挨拶したのに!
あたしにもおかえりって言ってよう。
「寒いでしょう。入って入って」
「はい、ありがとうございます」
おのれカタセくん。なんだかちやほやされちゃって、気に入らないよう。
寒い廊下であたしがぶるぶる震えていると、のしのしと貫禄のある足音が聞こえてきた。
「ぶみゃーお」
モカじゃないかい。よく来たね。
「みやーお!」
カズコさん! 久しぶり!
カズコさんは、この家で飼われているキジトラの猫だ。ミネちゃんがまだこの家にいたころからずっといるというから、一体何歳なんだろう。考えたくないな。
「みゃー」
カズコさん。おかあさんがあたしをかまってくれないよ。
「ぶみゃーお」
ミネちゃんが男をつれてきたんだろ? もう三日前から大騒ぎだよ。おかあさんは神社にお祈りに行くし、おとうさんはお酒の量が増えるしさ。