にゃおん、とお出迎え
電話を切って、おじさんは嬉しそうな顔であたしを見る。
「しばらく逃げるなよ」
秘密の約束をするみたいに指を立てて、笑う。
ああ、この人、太陽みたいな笑顔なんだなぁ。
おじさんが晴れの笑顔をするからかしら。
おじさんの肩から見える空が、少しずつ白くなってくる。
雨の音は、ポツンポツン。
さっきよりもずっとゆっくりになった。
これならあたし、帰れそう。
「おとうさん!」
そのとき大きな声がして、あたしは驚いて体を起こした。
「サユ! 静かに」
おじさんが振り向くと、あたしの目にも二人のニンゲンが見えた。
女の人と女の子。白っぽい傘とピンクの傘。
ミネちゃんが好きそうな色。
きっとこの人たち、おじさんを迎えに来たのね?
「にゃーおん」
よかったね、おじさん。
あたしも行くね。雨を弱くしてくれてありがとう。
おじさんに一声挨拶して、あたしは駆け出した。
「ああー、ネコちゃん! まってぇ」
女の子の声がする。
でも、ごめんね?
あたしちょっと急いでいるのよ。