にゃおん、とお出迎え

「にゃーにゃー」

あたし、もう行くね。


一応一声かけて、捕まる前に足の間から逃げ出した。


「あ、モカちゃーん」


女の子たちが名前を呼ぶけど、あたし今日は公園で遊びたいんだよう。
草のカサカサって音を聞いて、虫を追っかけるのが今の流行りなんだもん。

そしてミネちゃんにそれを見せたりして、「きゃー」って言われるのが楽しいの。

なのになのに。

耳を澄ませてカサカサと音のする草むらに飛び込んで、せっかく虫を捕まえても、あたし誰に見せたらいいの。

……ミネちゃんのバカ。
やっぱり一人じゃちょっとつまんないよう。


公園は、親子連れとか友達同士とかでいっぱい。
ひとりなのは、あたしとセイシロウくんだけみたい。

……もう帰ろうかなぁ。

まだセイシロウくんが立っていたけど、横をすり抜けていけばいいでしょう。
って思っていたのに、セイシロウくんはあたしに話しかけてきた。


「あ、ネコ」

「みゃー!」


あたしはびっくりしちゃって、とにかく近くの植え込みの中に潜った。

いたたたた。枝が刺さるよう。


「あ、逃げられた。なんだよ、ちくしょう」


追っかけてくる訳でもなく、セイシロウくんはあたしから興味を無くしたように、また道路の方を見ている。

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