にゃおん、とお出迎え
なんだ。
そんなに怖い人じゃないのかな?
おずおずと、植え込みから抜け出して覗いてみる。
遠くを見る横顔はとても整っていて格好いい。
あたし、テレビに出てくるような男の人って好きだよ。
危険な人じゃないなら、仲良くしてあげてもいいのに。
でも、なんか時々、セイシロウくんの顔がにやける。
そんな時は、毛が逆立ってしまうのは何故だろう。
……ちょっとだけ、声をかけてみようかな。
でも、ちょっとだけよ?
「にゃーお」
「ん?」
セイシロウくんがこっちを向いた。二つの瞳があたしを見つめる。
昨日、ミネちゃんを送ってきた男の人も、このくらい格好良かったらなぁ。
そしたらもう少し優しくしてあげたのにねぇ。
「にゃー」
「お、鳴いた」
今度は笑った。いいわね。笑顔がやさしいわ。
楽しくなってきて、尻尾が勝手に揺れちゃう。あたしが興奮してるってみんなにバレちゃうじゃないの。
「お前、名前なんて言うんだ?」
「みゃー」
モカよ。お前って呼ばれるより、名前で呼ばれる方が好きだわ?
「可愛い声だな。こっち来いよ」
ふらふらとついていきそうになって、さっきの女の子たちの話を思い出す。