にゃおん、とお出迎え

あたしも入りたいなぁ。でもこの扉は重たそうなんだよね。
横に動く扉なら得意なんだけど、押したりするやつはちょっと苦手。

人が入っていく瞬間を狙ってみるけど、ドアの手前についたころには、もうしまっちゃってて入れない。

あーん、開けてよ。あたしも入れて。


ドアを爪でガリガリしてみる。
こうすればミネちゃんは開けてくれるんだけどな。

でもここはダメみたい。誰も出てこない。
やあね。あたしがここにいること、誰か気づいてよー!


 あたしの願いは、意外にもすぐに届いた。


「あれ、マスター大変です。ネコちゃんが」


でてきたのはミネちゃんよりおばさんの女の人だ。

ほうきとちりとりを持ってる。
お掃除でもするのかしら?


「黒ネコちゃんかぁ」


その人はちょっと眉を寄せた。

あたし、ニンゲンがたまにするこの顔はキライ。

よくいるのよ。
黒ネコは縁起が悪いとか言ってあたしを追い返す人。

縁起ってのがなんなのか知らないけど、あたし、まだ何にもしてないのに追い返すって酷くない?
悪いことなんてしないのに。


警戒して毛をたてるあたしに、女の人は困ったように後ずさりし、中へ入っていった。


「ま、マスター、助けて下さい」


今チャンスだったかも、と思った時にはすでに遅し。
あたしの目の前で再び扉は閉まる。

あーん、入れなかった。入れなさいよう。

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