にゃおん、とお出迎え
「あ、でもここまで来たら、コーヒー飲んでこうかなぁ。マスターさんいるかなぁ」
ミネちゃんの顔が急に晴れてくる。
「にゃーおん」
こぉひぃさんは駄目よ。
あたしのなんだからね。
ここのマスターの『こぃひぃ』さんは、格好いいおじさんなの。
笑顔が優しいから、あたしは好き。恋をするならこういう人がいいよねって思うんだ。
「ねぇ。かーのじょ」
その時、嫌な感じの声が、後ろからした。
「え?」
振り向いたミネちゃんの顔も強張っている。
そこにいたのは、肩までの髪の男の人と野球の帽子みたいなのをかぶった人のふたり。ガムをくちゃくちゃ噛んだまま、ミネちゃんとあたしを見下ろしている。
「ひとり?」
「にゃーご」
ひとりじゃないよ。ミネちゃんにはあたしがいるもん。
「あ、猫だ。うへぇ、黒猫かよ」
黒猫だからなによ。
そうやって色であたしのこと嫌がる人間は、大嫌い。
「……なんですか?」
ミネちゃんも眉を顰めて彼らを見る。
「いや、ひとりならお茶しない? ほら、ちょうど喫茶店前だし」
「お茶くらいひとりで飲めます」
「そんなこと言わないで。俺たち暇なんだよね。あ、じゃあもっと違うところに行く?」
腕を掴まれそうになって、ミネちゃんが体を震わせた。