にゃおん、とお出迎え
「向かい合って、……湯気を囲む時間があるだけで、救われた気分になることもあるって言ったら、怒られてしまってね」
寂しそうに笑う人は、諦めているのかな。
だからこぉひぃさんは、もう追いかけなくていいって思うの?
でもあたしね、あの人の足が遅すぎるのって、追いかけてほしいからじゃないかって思うんだけど。
「でも、マスターさんにとって大事な人なら、追いかけたほうがいいですよ」
プレゼントにと用意した紙袋をぎゅっと握って、ミネちゃんがこぉひぃさんを見上げる。
「女の人って、追いかけられたいから逃げるってときもあるんです。そういうときって、彼なら追いかけてきてくれるって希望に、すがっているの。自分で試しておいて勝手だけど、来てくれないと二重に傷ついちゃうんです。だから、行ってあげてください」
言葉の終わりまで聞かずに、こぉひぃさんは走り出した。
一度立ち止まって、「もしよかったら店の中で待ってて」とミネちゃんに声をかけて、再び全速力で追いかけていく。
こぉひぃさんが追いかけられたことに気付いた彼女は少し速度を上げた。
でも捕まるのは、時間の問題だと思うわ。
“追いかけてきてよ。
あたしは逃げるけどね。
だって、必死になって探してくれるのがうれしいんだもん”
そんな気持ち、あたしもミネちゃんに持ったりするけど。
あのお姉さんも同じなのかもなのね。