にゃおん、とお出迎え

「山下さん、モカちゃんにチーズってあげてもいい?」

「あーごめんね。人間用のはちょっと塩分が多いから。……気持ちだけもらっておくね!」


爽やかな笑顔で返すミネちゃん。
さっとひっこめられちゃって、口の中によだれがたまっていたあたしは、お預けを食らった状態になる。

やっぱりカタセくんダメダメ。
もっと勉強して出直してきて?


だけど、今日はどうしてもカタセくんの車に乗らなきゃいけないらしい。

車に乗るのって初めてだ。
最初は大人しくカゴに入ってたんだけど、微妙に揺れる振動とかが気になって、出してもらった。

窓の景色が流れてて、すごーく早い。
何だか目が回っちゃいそうだよう。


「モカちゃん、動いちゃだめだからね」


そう言われたので、ミネちゃんのおひざで車の中を観察。

おうちとは違う匂いがする。あったかい空気の出るところと、なにかのボタン。
気になるけど、きっと触っちゃダメなんだよねぇ。

まあるいハンドルを握るカタセくん。
……カタセくんはものすごく何度もこっちを見るの。

左手が、やたらにハンドルから離れて、ミネちゃんの方に伸びてくる。

その手はあたしを撫でたいのか、ミネちゃんに触りたいのか分からないんだけど。
あたしは「しゃー」って威嚇してやる。
ビクッてして面白いんだよ。

カタセくんには悪いけど、あたしがここにいるうちは、ミネちゃんのおひざはあたしのもの。
誰にも譲らないんだから!

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