にゃおん、とお出迎え


再びカゴの中に入れられたあたしからは、外の景色は隙間からちょっとしか見えないんだけど、ミネちゃんが立ち止まったのは、大きな建物の前のようだ。

勢いよく扉を横に動かし、「ただいまー」と声を出す。

あたしも、ただいまって言えばいいのね?

「みゃー」

一声鳴いて返事を待つと、バタバタと重ための足音がやってくる。


「美音! お帰り。やっと帰って来たね。そんなに遠くないんだからたまには帰ってこればいいのに、お盆と年末しか帰ってこないってどういうことだい」

「お母さん、玄関先でそんなにがみがみ言わないでよ。ねー寒いよ。入れて。おとうさーん、ただいまー」

「こら、アンタ人の話聞きなさい!」


なんか。面白いなぁ、会話。

おうちに居る時のミネちゃんとちょっと違う。
何でもポンポンいうの、なんか珍しい気がする。


「この子がモカちゃん」


ミネちゃんは、お部屋に入るとあたしを出してくれた。

あたしの目には、出てきたのは、丸顔でふっくらとした、目のあたりがミネちゃんに似てるおばさんと、なんか布のついた不思議な机に入ってる、頭の涼やかなおじさんが見える。


「へぇ、可愛いじゃない。でも黒猫?」

「不吉だな」


酷い。そんなことないよう!
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