にゃおん、とお出迎え
「お父さん、黒猫が不吉なんて今どき流行らないわよ。可愛いでしょ。この子、声がすっごく甘ったるくて可愛いんだよ?」
「みゃーおん」
「あ、ホントだ可愛い」
おばさんがあたしに近寄ってくる。
悪い人じゃなさそうだけどさ。初めて会う人って苦手なんだよ。今日はカタセくんにも気を使って疲れちゃったしさ。
あたしはおずおずとミネちゃんの方に近寄った。
「お母さん、怖がらせないでよー」
「何にもしてないよ。モカちゃんは何食べさせてもいいの? カズコさんと同じでいい?」
「ちゃんとキャットフード持ってきたからこれあげて」
「アンタはどうしてそうマニュアル主義なのかね。別に猫まんまでも元気で居るじゃない、カズコさん」
「そうだけど。最初に見たときすごく弱ってたからさ。ちょっと心配なの。モカちゃんの事は」
そう言いながら、ミネちゃんは布が一杯かかっている机に座った。
さっきっから気になっているんだけど、これ、なんなの?
お布団がかかってる机なんて初めて見たんだけど。
「あーやっぱりコタツはいいよねー。一人暮らしだとコタツおけないのが嫌ー」
「じゃあこっちで仕事捜せば?」
「それも嫌ー」
あたしも、ミネちゃんのおひざに乗せてもらう。
すると、ミネちゃんが布団みたいなのをかけてくれる。
中はすごく、あったかい。
うわあ、何これ。
いいなぁいいなぁ。コタツ。
でも待って?
何か変な匂いがする。
動物の匂いよ。たぶん、あたしと同じ猫……