にゃおん、とお出迎え

「酷い、お母さん。彼はいい人だったわよ」

「じゃあ、いいところを十個あげてごらんなさい」

「えっとね。まず優しいし。……でも最後の方優しくなかったか。笑顔が素敵で、背が高くて、……あれ?」

「ほら、結局見た目しか出てこないんじゃないか」

「……ホントだ」


ポカンとしておかあさんと目を見合わせるミネちゃん。


「ちょっとくらい塩分が多くたって、ネコは死ぬわけじゃないよ。形にばっかりこだわって、今落ち込んでるモカちゃんを放っておくのも可哀想じゃないか。アンタもね、色々こだわらずに周りに目を向けてみなさい。本当にいい男は実は近くに居たりするかも知れないよ?」

「そうかなぁ」


何だかしんみり?

良く分からないけど、あたしもお話に混ぜてー!!

あたしがひと鳴きした瞬間、カズコさんがいきなり立ちあがったかと思うと、あたしの首根っこを加えて歩き出した。


「にゃ、にゃおん」

なに? 何なの?
カズコさん離してー!!


「ぶみゃん」
いいから、おいで。

あたしを加えたまま、聞き取りづらい声でそんなことを言うと、カズコさんは外へと向かう。
そして、玄関の横を回って、窓のすぐそばにある木の並んでいるところにきた。縁側っていうらしいよ。前にミネちゃんのお父さんがそう言ってた。

あああん、寒いよう。
あったかいコタツが好きなのに、なんでこんなところに来たのよう。

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