にゃおん、とお出迎え

そんな訳で、溜まったストレスをお昼寝で解消しているわけ。

もうあたし、子供じゃないんだから、八つ当たりなんてしないのよ?
自分で解決するんだから。
すごいでしょう。

でもそろそろ帰らないとなぁ。

あたしはツンとすまして起きあがる。

ひらひら。ひらひら。
サクラの花びらが落ちてきてとってもキレイ。
だけど、こういう動きって、猫的には本能が刺激されるというか……。

ああ、尻尾がムズムズする。
捕まえたい、捕まえたい、捕まえたいよう!

そんなタイミングで、また木の上から花びらが落ちてきた。
今度こそ捕まえるぞう!

ピンクのひらひらに向かって、後ろ脚を蹴り上げた。


「にゃおーん!」

「うわぁ!!」


花びらを狙ったはずだったのに、あたしは男の人のズボンにひっついてしまった。
黒い髪のおじさんは、あたしを見て目を丸くして、その場にへなへなと座り込んでしまった。


「みゃー」


ごめんなさいね?
ちょっと失敗したのよ。

スボンから離れて、そう言って見上げると、おじさんは「うわ? え?」とまだどぎまぎしている。
ズボンには土がついちゃっている。あたしがひっついたところだ。汚しちゃったな。


「にゃおん」


ごめんね。おじさん。悪かったわ。

< 68 / 154 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop