にゃおん、とお出迎え


「なんだ、猫か。……でも黒猫か。不吉だな」

「みゃ」


せっかく謝ったのにそういうこと言う?
なんでニンゲンってあたしが黒いだけでダメっていうのかしら。

あたしは一緒に生まれたお姉ちゃん達と、なんにも変わらないよ?
ママとお姉ちゃんたちは三毛猫で、あたしは黒。
ただ色が違うだけなのに。ニンゲンはあたしのことだけ嫌な目でみてた。
パパと同じだっていう、綺麗な黒なのに。

おじさんはまじまじとあたしを見るとふっと笑った。


「でも、声が可愛いな」


そして、おしりをぱんぱんと叩きながら、今度はしゃがみこんだ。


「みゃおん」


声はね、よく褒められるの。
だから好きな人にはいっぱい鳴くよ?

でもおじさんはさっきあたしを黒って言ったから、どうしようかな。

大体、おじさんの髪の毛だって黒いのに、人のこと言えないでしょう。
あ、でも。白いのもちょこちょこ混ざってるね。


「そう言えば昔、アヤが猫飼いたいって泣いた事あったなぁ」


しみじみとあたしの背中を撫でてそういう。

馴れ馴れしいわよ? って言ってやろうかと思ったけど、
さっき驚かせてしまったから我慢するわ。

おじさん、思ったより優しそうだし。



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