にゃおん、とお出迎え
「まあ仕方ないんだけどね。俺たちには、赤ん坊預けるような相手もいないから。たまに二人きりになりたくても無理だしなぁ……」
おじさんは勝手に納得し始めた。
いや、あたしは納得できないよ。
だってミネちゃんあんなにあたしに優しかったのに。
今は熱に浮かされたみたいになっててさぁ。
こんなの、ビョーキみたいよ。
「にゃおん」
ああもう、春ってビョーキになる季節なのよ。
ハツジョーキってやつ。誰もかれもが恋愛病になっちゃうのよー!
「せめて早く帰ってアヤを休ませてやるかー。あー仕事頑張ろう。さー行くか」
おじさんは、立ち上がると大きく伸びをした。相談にのれたか分からないけど、あたしは話せて少しすっきりしたわ。ありがとうね。
見上げると、おじさんの頭のその奥に、満開の桜の木が見える。重なっていて、まるでおじさんを飾っているみたい。
確かに、黒にピンクは可愛いかも。
「みゃーおん」
ねぇ、おじさんも可愛いよ。あたしとおそろいだね。
そう言ったらおじさんはにっこり笑ってくれた。
「またな。可愛い声のネコちゃん」
「にゃおん」
あたしはモカよ。またね、おじさん!
おじさんは、小走りに駐車場の方まで行った。
そしてその後、車に乗ってビューンって行っちゃった。