にゃおん、とお出迎え
これは知ってる。写真ってやつ。
あたしも前にミネちゃんに撮ってもらったよ?
この写真には女の人が写ってた。綺麗なおばさん。
ミネちゃんよりおばさんって思うけど、ミネちゃんよりキレイかも。
そんなこと言ったら怒られちゃうかな。
「驚かせたか? ごめんな。……ああでも良かった」
おじさんは写真を拾い上げるとほっとしたみたいな顔した。
大事なものだったのかな。
おじさんがあんまり安心したような顔をするから、ちょっと興味が出てきた。
あたし、大事なものを失くす辛さは分かるのよ?
見つかったんだったら良かったね、おじさん。
「みゃーおん」
そんな気持ちで鳴いてみたら、おじさんはあたしのことをじっと見た。
「黒猫……かな? 意外と逃げないんだな。可愛いじゃん」
「みゃーお」
おじさんが触るつもりなら逃げるけど。話すだけならいいかなって思ったんだよ。
「はは。甘えてるみたいな声だな」
そう言っておじさんは、高いお空にぽっかりと浮かぶお月様に透かすように写真を持ち上げて、「なぁ?」なんて問いかける。まるで、写真のヒトとお話しているみたいに。
あたしは、なんとなく黙ってそれを見上げた。
おじさんのやっていることが、あたしがお月様のママとお話しているのと同じように見えたから。