にゃおん、とお出迎え
「不吉な黒猫だってこんなに可愛いんだもんな。見た目じゃわかんないもんだよなぁ」
「みゃーお?」
何が?
「強気な肉食美人とか見せといて、実は甘えたがりだもんなぁ」
ツヨシなニッショクビジンって何?
おじさん、あたしの知らない言葉一杯話すのね。
あ、じゃあ、あれも知ってるかなぁ。
ねぇねぇ、おじさん。
ウワキってどうすればできるの?
「みゃーみゃー」
「ん? 何だ急に鳴きだして」
おじさんは笑うと、地べたに座り込んだ。
ここ、土なのに。
よく子供もお母さんたちに「泥がつくわよ」って怒られてるのに。
おじさんは平気なんだね。
「おい、猫。知ってるか。このカメラで撮るとすごくキレイに写るんだぜ?」
「みゃー」
「普段は隠れてるものもふとした一瞬現れる。それを捉えるのが俺の仕事。彼女のすがるような目も何度も撮った」
「みゃ?」
彼女って誰?
「お前のその甘えた鳴き声みたいに、口にだせばいいのにさ。……言わないから」
おじさんは、また写真を見た。
ああ、このヒトのことなのかな?
「俺が見つけてやんなきゃねぇって思うじゃん?」