にゃおん、とお出迎え

お月様のこと、英語でムーンって言うんだって。知ってた?
あたしは初めて知った。しかもムーンには、いろいろなムーンがあるらしい。


「ブルームーンって知ってる?」


得意気にそう言うのは、なぜかうちのキッチンスペースで銀色に光る細長いものをシャカシャカ振り回してるカタセくん。


「えー知らない」


答えるミネちゃんはワンルームの壁に背中をつけて、クッションを抱きしめている。あたしはその足元においてあるクッションの上で丸くなっているところ。


「ひと月に二回満月になることだよ。二回目をブルームーンって呼ぶんだ。見ると幸せになれるんだってさ」

「へぇ、素敵!」

「というわけで、じゃじゃん!」


カタセくんが魔法みたいなことをし始めた。一生懸命振っていたものを、パカンと二つに割ったかと思ったら、三角のグラスに綺麗な色のものを注いだのだ。


「ブルームーンっていうカクテルだよ。どうぞ?」

「うわー、すっごいおしゃれ!」


ミネちゃんはすっごいうれしそう。一気に立ち上がって飛び上がって喜んだもんだから、持っていたクッションが落ちてきてあたしの体にミラクルヒット。柔らかいから痛くはないけどさぁ。あたしは、すっごい面白くない。

そもそも、カタセくんがおうちにいるのも気に入らないんだよう。
あたしは立ち上がり、キッチンスペースへと近づく。

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