ナツコイ×トライアングル
今までのことを誤魔化すように、注目を逸らした。
――本来の目的忘れそうになったじゃん!!
拾った洗濯バサミで、今度は落とすことなくタオルを挟むと、次のタオルへと手を伸ばした。
けれど、目指したタオルは私以外の手に攫われていった。
「えっ」
見上げると、タオルを広げる先輩の姿。
そして、タオルから私に視線が移る。
先輩は初めて見る優しい顔で微笑んでいた。
「手伝う…なんか近藤って放っとけないな」
でもそれは一瞬で。
最後は薄く苦笑らしきものになっていた。
一度治まった鼓動が、再加速していく。
「私、先輩に謝らないといけません」
「どうして?」
高鳴る鼓動を宥めながら言葉を選ぶ。
これから送る、謝罪の言葉。
「こんなにいい人なのに。警戒してました」
先輩は、私の言葉に次のタオルを取る手を止めた。
深い、海のような、澄んだ瞳が私を射抜く。
濁りを許さない、心の奥底まで見られているような気分になって、目を逸らすまいとこぶしを握った。
「警戒?」
「はい…私が、水泳をやっていたこと。周りに話したり、私のことを知っている素振りをするんじゃないかと……」