ただあの子になりたくて


「さあ、俺の合コンでの十八番歌っちゃおっかな!」

成り行きでたどり着いたカラオケ屋に入るなり、拓斗はプロのような華麗な手つきでタッチパネルをいじりだした。

「これは合コンじゃないんだが……?」

呆れて頬を掻く蒼介はドアも閉めずに立ち尽くしている。

「蒼介はかたいなぁ、な、椿? 小さいこと気にすんなって」

マイペースに笑ってあしらう拓斗に、私と蒼介は顔見合わせ、苦笑いをした。

こうなったら拓斗のペースに巻き込まれるしかない。

「ま、座ろっか?」

私がそう言えば、蒼介は戸惑い気味に頷いてソファーに座った。

私も何気ないふりをして彼の隣に腰を下ろす。


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