ただあの子になりたくて
*・*・*・*・*
「かわいいかわいい妹よ、私たちはまたあなたと一緒に暮らしたいのよ」
私は手を取られ、切実にゆがめられた顔で迫られる。
「このナイフで王子の心臓を刺すの」
「そうすれば人魚に戻れるわ。どうか、私たちのところへ戻ってきて」
今にも泣きそうに声を震わせる人魚姫の姉たち。
姉たちはこぞって私の手を取る。
見下ろせば、手に握らされた、武骨で軽い作り物のナイフ。
じっと見つめる姉たちに、私は曖昧に頷き、振り返る。
そこには、手作りの簡素な台に横たわる王子、蒼介の姿。