ただあの子になりたくて
彼のいつもより冷えた手が、私の肩を勇気づけるように叩く。
私の表情も知らないで彼は、今どんな顔を私に向けているのだろう。
何も悲しんでいない、この無の顔など、見せられるわけがなかった。
まだ私の真ん前に張り付き続ける彼の脚がうっとうしく見えてくる。
私は両手をぎゅっと握りあい、ただただ耐える。
前の私なんてどうだっていい。
私の限界がもう近い気がした。
だからどうか、私の醜さに気づく前に離れてほしかった。
「俺、拓斗探して連れてくる。先に校門で待ってて。三人ですぐなずなのとこに行こう」
さっきまで不安に揺れていた声が嘘のよう。