ただあの子になりたくて
校門で合流した拓斗は酷く呆然としていて、私にすら何も口を開かなかった。
誰も無駄な口は叩けなかった。
急いで飛び乗ったバスでも3人そろって無言。
蒼介はずっと不安そうに拳を握っていて、拓斗はどこか魂の抜けたようなぼうっとした目をしていた。
私だけが冷静にそんな2人を見ていた。
2人とも必死に口にしないようにしていたのだろう。
堪えている思いがひしひしと感じられる。
なずなは、このまま本当に死んでしまうのだろうかと。
それは私にもわからなかった。
私の肉体が死んだら、この私の魂がどうなるのか、あのおかしな悪魔に聞きそびれた。
気になるのはそれだけだ。
あとは、私がどうなろうと親がどうしようとかまわない。
バスが、この前も聞いた病院の名を告げる。
私はいよいよ、雨のバス停に降り立った。