ただあの子になりたくて


「今夜が……山場だと言われているんだよ……」

お父さんも被害者のように、しゃがれた声を出して顔を伏せる。

「そんなっ……!」

ずっと黙っていた拓斗が、隣でようやく堰を切ったように声を出す。

その痛々しくかさついた声に、私は軽く頭を抱えた。

ズキズキと頭が痛みだす。

「だからよく、顔を見ていってやってくれないか……?」

静かに響き渡ったお父さんの声。

悲鳴のように、悲痛な音を立てて息をのむ蒼介と拓斗。

もはや言葉もなく目を剥くばかりの2人。


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