ただあの子になりたくて
本当に終わってしまった。
雨に濡れそぼったチクチクする草を、手で憎らしく握りしめる。
こんなことになったのは全部、あの変な悪魔のせいだ。
あの悪魔の言う、恨みと憎しみを薄めるために、私は椿になってこの世に戻ってきたはずだった。
でもところがどうだ。
椿になって私はもっと欲張りになった。
椿の体を手にしても、うまくなりきれない自分がいつだって歯がゆかった。
嘘を重ねる自分が、とても汚いものに思えた。
自分の両親には白い目しか向けられなくなった。
拓斗の純粋な思いを振り払った。