ただあの子になりたくて


でもそんなもの気にしない。

「出てこい! ふざけんな!」

私は全身をばたつかせる。

濁流の音が耳を支配する。

川に負けてたまるものかと、大声をぶちまける。

「私を元に戻せよ、悪魔っ!」

両手を渾身の力で地面へぶつけた。

瞬間、見開いた目に無数の雨粒が飛び込んでくる。

咄嗟に閉ざした瞼。

黒い世界に白い光が満ちて目が眩む。


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