ただあの子になりたくて
抵抗もできないまま、みるみるうちに、真っ白な無の世界へ意識が引きずり込まれていく。
いくら見渡しても、ただ一色の白い世界に私は言葉を失う。
何の音もない。
まるで一つの波もない水面に浮いているように、全身の感覚がない。
重力などないような世界にただ私の視界だけが開けている。
私はこの世界を知っている。
見渡す限り何もない世界。
前にも私はここへ来た。
「騒々しいなぁ。君ほんと、うるさいよ」
人を小馬鹿にしたような幼い声に、頭の中で光がはじける。