ただあの子になりたくて


この声はと、私は大きく目を見開いた。

「この僕を呼び出すなんて、君は人間の分際で随分偉いんだね」

「あんた!」

私は絶叫した。

視界いっぱいに映りこむ、ショートヘアーで垂れた目の冴えない顔の女子。

まぎれもなく私だ。

私が、私らしくもなく生意気にもあからさまにへの字口をして、私を見下ろしている。

私の顔でこんな態度をとるのは、アイツしかあり得ない。

私を言葉巧みにまんまと乗せた、あの悪魔だ。

「こんの悪魔め! 私をよく口車にのせてくれたじゃない! おかげでさんざんよ!」


< 198 / 318 >

この作品をシェア

pagetop