ただあの子になりたくて
喉が避けんばかりの大声でありったけの怒りをぶつける。
こんな奴が現れなければ、私は潔く人生を終りにしていたのだ。
自分の体を捨ててまでこんな生き恥をさらさずにもすんだ。
それは全部、まぎれもなく平然と私に成りすますこいつの仕業だ。
すると、目の前の私は肩をすくめ、低い鼻で嫌味ったらしく笑う。
「やだね。八つ当たりかい? だから人間は好きになれない。人間は矛盾だらけだ」
手のひらを反すジェスチャーまでして、私を見下ろしている。
私は唸る。
手が出せないことがもどかしい。
私は必死にそいつを睨む。