ただあの子になりたくて
自分の親も、友達だった椿も、その心の中を私は知る努力もしなかった。
椿は、何でもできる完ぺきな女の子と、勝手に決めつけて、私はひがんでいた。
悲劇の”ヒロイン”を気取っていたのは、私ではないか。
椿も私と同じ、たった一人で想いを寄せる普通の女の子だったのだ。
それでも前を懸命に向こうとしていた、等身大の頑張り屋な女の子。
そんな椿の健気すぎる姿が、胸の奥深くに入ってくる。
本当なら一緒に悩みを打ち明けあえたかもしれない、身近で大事な友達だったのだ。
そんな友が、私なんかのすぐそばにいたのだ。
ごめんなさい。
そう心の中で繰り返しながら、椿が大好きな気持ちが胸で膨らんでいく。
もう遅いことも、虫が良すぎること、痛いくらいにわかっていた。
けれど、私はその日記帳を、まるで椿のようにいつまでも抱きしめ続けた。
きっときっと、この体を椿に返して見せる。
そう念じて、私は写真の中の椿に深く頷いた。