ただあの子になりたくて


「ありがとう……。ありがとう、蒼介……。じゃあね」

ほとんど息のような声で呼びかける。

あなたに出会えて、私は本当に良かった。

だから、私ができる、彼のほめてくれた飛び切りの笑顔で別れを告げる。

彼があっと口を開いて手を伸ばす。

でも届かない。

私は後ろへ倒れこむようにそのまま彼から離れていく。

そんな顔をしないでほしい。

彼の苦しく見開いた目が見える。

観客の海がわっと声を上げる。


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