ただあの子になりたくて
もう片方の手で白い布に包まれた箱も抱きしめた。
お母さんもお父さんの体に寄り添い、力強くその真っ白な塊を腕で包み込んだ。
また胸があたたかくなってしまう。
私は、2人には見えないと知りながら、深々と頭を下げた。
いっぱい迷惑をかけてごめんなさい。
たくさん辛いことはあったけど、それでも二人に命をもらえて、私は幸せでした。
そんなありったけの想いをこめてから、私は勢いよく頭を上げる。
私は最期に仲睦まじく寄り添う両親を目に焼き付ける。
そして私は、隣の私に目を向けた。
きょとんとしている私の顔に、私は微笑みかける。
「次、行こう」
私は私を連れて、もう二度と帰れない我が家に清々しく背を向けた。