ただあの子になりたくて


私はそいつと一緒に宙を自由に駆ける。

茶や黒や青や黄土色の家々の屋根がひしめいている。

その間を縫うように走っている灰色の細い道。

歩いている人間の頭なんてただの点に見える。

私がまだ地上に足をつけていた頃、泣きながら駆けずり回っていた道が今は、とてもちっぽけなものに思えた。

けれど私は、この小さな町で悩んで、じたばたともがいて、暮らしていたのだ。

陸にあげられた魚のようにかっこ悪くて無様だったと思うけれど、私はあれでいて懸命だった。

そんなころの私が、この町にはまだ息づいている。

それさえ今となってはいい思い出だ。

そろそろ先には住宅街にぽっかりと穴が開いたように、茶色い土がむき出しの小さな公園が見えてきた。


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