ただあの子になりたくて


私は消えていく手で、どんどん光に変わって消えそうな頭を撫でて声を振り絞る。

「いっぱいいっぱい、ありがとう!」

精いっぱいの声を絞り出した瞬間、もう一人の私がやっと初めてやわらかに微笑んだ。

もうお互いに体はほとんど残っていない。

まだ見える目で最期に、たくさんの家族の形が並ぶ私の町を見下ろした。

心から思う。

もし生まれ変われるのなら、またこの町に、私のお父さんとお母さんに、拓斗と椿と、蒼介に会いたいと。

みんなのことをそれほどに大好きだったと。

悲しさと悔しさと温かさが入り混じった気持ちで、私は町に向かって叫んだ。

「さようなら。ありがとう……!」

言葉を言い切るのと、声が消えるのはほぼ同時だった。

私は命の強い光となって、青い空へ舞い上がった。



*fin*

2016.8.30 Salala
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