ただあの子になりたくて


呼吸すら、忘れた。

その場にくぎ付けになって目を見開いていた。

淡い夢から覚めるには、意地悪なほど十分すぎた。

彼をずっと見つめてきた私にはすぐにわかった。

すらりと高く、しゃんとのびた背中。燃えるような金色の光を纏った、跳ねるくせっ毛。血潮が浮かぶ、細くて長い綺麗な指。

そのどれもが、彼だった。

そんな彼の前でひらり、短いスカートがはためいた。

見覚えのあるハーフアップのロングヘアが宙にそよぐ。印象的な泣きぼくろのある目元を細め彼に微笑む。

そして彼女は軽やかに床を蹴った。

彼のシャツがふわり揺れる。

シルエットが、絡み合い、ひとつになる。



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