ただあの子になりたくて


「あっ……」

唇から、泣きぬれた声がこぼれおちた。

驚いたようにシルエットがうごめく。

大きく息をのんで口をふさぐ私。

けれど、焦った足がもつれた。

床がキュッと甲高い音を上げる。

「えっ、誰……?」

微かな声が、バラバラの足音が、階段の上から迫りくる。

心臓が大きく跳ねあがる。

頭が、真っ白になった。

足が勝手に、床を力いっぱい蹴りだしていた。

一瞬で視界は、煌めくオレンジ一色で埋めつくされた。


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