ただあの子になりたくて
直後狭めた視界の端に、階段の手すりの向こうに駆け寄ってくるくせっ毛頭が見え隠れした気がした。
でも、眩しすぎて、恥ずかしすぎて、まともに目なんて開けるわけがなかった。
私は鞄に顔をうずめ、一気に何段もとばしながら、全速力で階段を駆け下りる。
階段と窓に閉じ込められた世界に、私の足音がけたたましくこだまする。
心臓が張り裂けそうに悲鳴を上げる。
息が限界を知らせようと、激しく上がる。
あの光景がよみがえってきて、かき消すように首をふる。
それでも、身を焦がすように燃えるオレンジの中、ひたすら走る。
私の心が逃げろと叫ぶままに。