ただあの子になりたくて


優しい彼のいつになく曇った瞳に、私は小さく目をみはる。

すると拓斗も落ち着きを取り戻し、浮かない顔で呟いた。

「それは、確かに……。俺も混乱して言葉なんて出てこなかった……。だって、思いもしねぇもん……そんなことになってるなんて」

思い出せば、あの饒舌な拓斗がほとんどしゃべっていなかった。よほどのことだ。

私が思っていたより、私の自殺は大きなものだったらしい。

複雑だけれど、母親よりずっと、言葉が出ないほどに。

私には今も後悔はないけれど、だから余計に何も言えない。

3人とも言葉を失い、拓斗は心細げに私たちの顔をのぞき込んで聞いてきた。

「この後、どうする?」

「今日は帰ろう。拓斗はチャリだったよな。俺、心配だから椿送ってく」

黙り込む私を、椿を、気遣ったのか、蒼介が段取りをつけていく。


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