ただあの子になりたくて


隣の彼すら直視できない小心者のくせに、未だに気分の悪いふりを決め込んで、まだ高い太陽にてかる窓をちゃっかりと見つめていた。

窓にうっすらと映り込む、一人の女の子と、寄り添う大好きな人の姿。

すぐ隣で茶色っぽく煌めくくせ毛に、優し気な伏せ気味の目、男の子らしい広い肩に、案外たくましい腕。

そんな腕に時折触れる肩から、甘やかなしびれが広がっていく。

窓に映る一人の女の子は、幸せそうに、悲し気に、眉をぐにゃりと歪めてそっぽを向いた。

私は自分よりも繊細で綺麗な長い指で、ビロードのシートを力強くひっかいた。

私はなんて、いやしいのだろう。

椿の居場所を奪ったことも、2人をこんなに驚かせてしまったことも、全部私の罪。

所詮この体は、盗み取っただけで、椿の体。

それなのに、私は幸せだと思ってしまった。


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