ただあの子になりたくて
彼の手が、私の頭を撫でているのだから。
「元気出せ、椿」
彼の一生懸命に笑った顔が、太陽の下で煌めきを放つ。
私は咄嗟にとってつけたように笑うしかなかった。
また、どんどん欲張りになる。
椿なんて呼ばないでほしい。
なずななんて名前は嫌いなのに、私に向かって私の名を呼んでほしい。
「奇跡が起きたなら、きっとなずなは帰ってくる。だから俺たちは元気でいよう、な」
彼の言葉には、笑顔には、いつだって偽りなどなかった。
私とは違う。
だから、彼に強く憧れる。
あなたみたいになりたいと。
あなたの隣に立ちたいと。
私は頷くふりをして、何でも暴き出しそうな白昼の太陽から顔をそらした。