ただあの子になりたくて


私の体はすでに石のようにがちがちだ。

椿が涼しい顔でこんな苦行をしていたなんて、ギョッとする。

最前列は、まるで身ぐるみはがされたように剥き出しで、全く油断ならない。

今は威圧的に近くなった黒板の前で、男女の係員が立っていた。

男子が白いチョークを手に、コツコツといい音を響かせる。

その音をバックに、女子の係員は教壇に威勢よく手をついた。

「それでは、うちの文化祭の出し物、演劇について今日も決めていきたいと思います!」

一気に教室中が色めきだった声を上げる。そこかしこに笑顔が咲いていく。

授業より何倍か元気の出た教室。

この部屋の一番片隅の私の席はひっそりと空になっていたけれど、他のクラスメイトは誰一人として仲のいい私たちに聞いてくる人はいなかった。


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