ただあの子になりたくて


担任の教師は母からなんと聞いたのかわからないけれど、今朝の出席確認はあっさりと病欠の一言で片づけられた。

蒼介や拓斗、椿ならいざ知れず、ほとんど空気だった私を気にする物好きはいない。

自殺をしてまで、各差を見せつけられるのは、少しばかりたまらない気分だ。

でも、騒がれない方が都合がいいのは事実で、仕方なしに心に折り合いをつけた。

ところで、今の時間は、先週すでに決めていた我がクラスの出し物、演劇について細かい内容を決めていくらしい。

女子の係員はやる気満々に腕まくりをして熱弁をふるう。

「先週、演目は人魚姫に決定しましたが! その脚本を、文芸部の西園さんに引き受けてもらえることになりました。はい、拍手!」

強制の拍手に苦笑いを漏らしながら手を叩きながら振り返れば、ポニーテールの女子が恥ずかし気に頬を染めて立ち上がっていた。

「私では力不足かと思いますが、頑張るので、よっ、よろしくお願いしますっ」

綺麗な直角の礼に、ポニテールは鞭のように振るわれる。

係員は満足げに笑顔を浮かべると、ずいっと教室を見渡しもったいぶって声を発した。


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