ただあの子になりたくて
「では、今日話し合いたいのはついに、肝となる配役です!」
私は顔に微笑みを張り付けながら、心の中では失笑していた。
係員が熱すぎる。
何故そんなにも夢中になれるのか、私はたぶん理解できない。
「まずは、花形、人魚姫と王子から!」
係員の宣言に、姫も王子もくそくらえだと心の中で叫ぶ。
自慢ではないけれど、私は人間ですらなかった。
幼稚園の女の子同士のおままごとでは、ペットの犬で、お手に待て、そして一吠えのワン。
お遊戯会では、棒立ちの木よりも更に渋い、岩の役。
もう役ですらないのに、先生に上手ねと褒められた時には、子供ながらに愛想なんていらねぇよとガンを飛ばしそうになった。
こんな私がどうしたら、演劇なんてものに熱くなれるだろう。
きっと絶対に無理だ。
今だって、演劇アレルギーが出そうだというのに。